狂想曲・・・第2  [スペシャルサンクス]

 

 

午後の昼下がり、数学なんてつまらない授業を右から左へと聞き流し、三上は窓の外、運動場を見ていた。そこには先日、自分の「気になる人」と気付いてしまった笠井の姿。

カラリとした暑さだが、外での体育はきついであろう。それもサッカーをしている。朝は早朝から、放課後は暗くなるまでサッカーをしているサッカー部としては、好ましくない授業だ。藤代にいたっては例外らしく、楽しそうにボールを蹴っている。それに合わせディフェンスする笠井は藤代に付き合わされていると言うのが正しいだろう。

果敢にも武蔵森サッカー部エースストライカー藤代に立ち向かう生徒もいた。

  バカ代の奴張り切りすぎだろ・・・・・・・っ!!

三上は思わず息を飲んだ。藤代に立ち向かって行った生徒の1人が足を滑らせ、笠井の方へ倒れた。無論、笠井はその生徒の下敷きになる。

笠井はそのまま、体育教師により横抱きにされ、保健室に連れていかれた。気絶でもしたのだろうか、笠井からは何の反応もなかったように見えた。

ガタリと音を立て、三上は立ち上がった。

「先生ー気分悪いんで保健室行きます。」

教師の反応を待たずして、三上は教室から出て保健室へ向かった。何故だか、行きたくなった。笠井が心配でしょうがないのだ。

 

 

「どーも。笠井ってそのベッド?」

「あら、三上君・・・そうだけど」

保健室に入るとすぐ笠井のいるであろうカーテンの引かれたベッドへ向かう。ベッドの中には幾分顔色の悪い笠井が寝ていた。

横に置いてある椅子を引っ張り出し、笠井の顔が見える位置に座る。

「三上君、これから出張なのよ。その子起きたら帰るように言ってくれないかしら?」

「・・・いいっすよ」

三上としては願ってもいないチャンス。笠井と2人きりになれるのだ。

音楽室で否そのまえ、談話室で少し話した後から、笠井は三上を避けるようにしていた。

しばらく立ち、授業終了のチャイムが鳴った。それに反応するように、ゆっくりと笠井が目を開いた。

「・・・お、大丈夫か?」

「え・・・三上先輩・・・?あ、大丈夫ですけど・・・」

大丈夫と言うわりには顔色はあまり良くない。むしろ悪いと言ったほうがいい。睡眠時間が足りないのか、目の下には白い肌には目立つ隈が出来ている。

「何、お前。寝てねーの?」

「・・・そんなことないですよ・・・」

目をそらし答える笠井。ウソをついているのは目の下にあるもので分かる。顔色もよくないことから、数日だけではなさそうだ。

「ピアノ・・・か?」

「・・・ほっておいて下さい・・・・」

泣きそうだと思うのは自分の錯覚だろうかと三上は頭の中で思う。実際に笠井は泣いてはいないのだ。頭が痛いのか笠井は眉を寄せ、眉間に手をやる。

「大丈夫か・・・?早退許可出てるぜ?」

「・・・大丈夫です・・・三上先輩、あなたは授業に戻らないんですか・・・?」

辛そうに目を閉じ、問う回しに笠井は「ここから出て行け」と三上に言う。

「ん?俺は笠井の傍にいたいからいいんだよ」

三上が言った瞬間、笠井は顔を紅潮させた。

  お・・・脈アリか・・・?可愛いじゃん

「・・・ふざけたこと言わないで下さい・・・。」

顔を隠すようにして笠井は呟く。

実際、笠井が武蔵森に入学した理由が三上なのである。サッカー部の試合を見に行き、フィールドの三上に魅せられた。「かっこいい」と憧れていたが、同じフィールドでサッカーをするようになってからは、憧れは「好き」に変わっていた。

親友である藤代もこの事は知っている。藤代自身がキャプテンの渋沢と付き合っているのだから、特に何かあったわけではないが、三上と言うことだけ反対された。それもそのはず、三上にはいい噂よりも悪い噂の方が多い。特定の彼女を作らず、たくさんの彼女がいる遊び人だとか、逆らえばこの学校をやめさせられるだとか・・・兎に角いい噂は皆無に等しい。

寮に帰ると言う笠井を三上は送って行った。笠井は断ったのだが、三上がそれを聞き入れず送ったのだ。

 

 

部屋に戻った笠井はベッドではなく机に向かい、楽譜を開いた。

1週間後にはコンクールがある。これで最優秀をとらなければ、この学校をやめさせられてしまうどころか、音楽の専門学校に通わされることになってしまうのだ。

そればかりは避けたかった。親友である藤代、同じサッカー部の先輩、そして三上、この環境が笠井には心地よかった。好きだと伝えられなくとも同じフィールドには立っていたい。

  あの人・・・よく分からない・・・・

集中しようとすれば三上の顔が浮かぶ。重症だと笠井は溜め息をつく。これではせっかくの静かな時間も、楽譜が頭に入らないのでは意味がない。

コンクールまでは後1週間しかないのだ。母親がこの為に作曲した曲を完全に自分の物にしなければならない。静かな環境が少ないこの状態では1週間は、短い。

無意識のうちに笠井は溜め息を吐いた。

 

 



進まない関係。いらいらする。相思相愛ならくっついちゃえよ!!とか思ってしまう。

まだ話しは続きます。今度はコンクール編・・・告白編かな?
亮さんねぇ、本当はもっともっと格好いい人なのです。私じゃ格好よく描けてなさ気だけど(泣)
竹巳ちゃんは可愛くてクールなのよ。んで、時々甘えたさん。あーーーかぁわぁうぃうぃ〜(きも)
さぁ、頑張りましょうか・・・



2004/8/31  t