キラキラ
眩しい太陽とそれを反射させている砂浜。ちらちらと小さな光りが照り反る小さな波の立つ海。
三上は大きめのパラソルの下にシート、そのうえにタオルケットを敷き、小さな領土を作り上げる。作った三上はここではなく、売店に行っている。

「暑い…」

笠井は派手に暴れている(遊んでいるのだが、笠井にはそう見えるらしい)藤代、根岸などのサッカー部一軍を目を細めて見る。
薄いパーカの下に水着を着ているので混ざることも出来るのだが、すぐに真っ赤になる肌と傷みやすい髪の為、笠井は海に入ろうとしなかった。

「笠井、飲むか?」

斜め上から、お茶の名前を付けられた犬がおまけのペットボトルを、渋沢が差し出している。タオルを首から掛けているところからして、先ほど海からあがって来たのだろう。

「ありがとうございます」

「藤代が沖まで行くと言い出してな、俺は遠慮させてもらったんだ」

笠井の隣に腰を下ろし、ペットボトルに入った液体を喉に流し込む。

「誠二は元気有り余ってますからね…」

くすりと笑みを零し、ひんやりとするペットボトルを頬に当てた。
「あー!!!キャプテン浮気は許さないっすよ〜」

藤代が流石の足でこちらに向かって走ってくる。
が、その手には何かがあるらしくお椀の形が作られている。

「タクには三上先輩がいるんだからね!キャプテンは俺のなの!」

「…わかってるよ……ってそれは何?」

藤代の手には透明で厚みのある水を固めたようなアレがいた。
沖まで行く途中で見つけたのだろうか。

「くらげー浮いてた!で、根岸先輩が刺された」
「大丈夫なのか?」

渋沢が根岸を心配するが、藤代にとってはあまり興味が無いらしい。

「中西先輩が一緒にいるから大丈夫っすよ!…イタッ!何するんすか!三上先輩〜」

「んなもん竹巳に近づけんな!」

三上の右手にはかき氷が持たれてあり、左手には何らかの飲み物が入ったコップがある。藤代は蹴られたようだ。
鮮やかな赤色のシロップがかかったかき氷を三上は笠井に手渡す。

「ありがとうございます。三上さんは海、入らないんですか?」

きゅうと体が中から冷えるような感覚の中、笠井は三上に問う。
藤代はくらげを処理したい渋沢により、波打ち際まで連れていかれている。

「竹巳はいらねぇだろ?別に俺も入りたいわけじゃねぇから…それに、竹巳と二人キリになれんじゃん?」
「…///恥ずかしいこと言わないでくださいよ…」

頬を紅潮させ、三上から目線を外した。

正直、笠井も二人キリになれることは嬉しい。ここ最近は部活も忙しくて二人で出掛けることも、二人キリになることもほとんど無かった。

「照れてんの?」

「変なこと言うからですよ…でも…おれも嬉しいですよ?三上さんと二人キリになれるの」

斜めに視線を外したまま、小さな声で言う。そんな笠井の行動に三上はニヤリと笑みを浮かべる。

「俺と二人キリになりたかったわけ?
「たまには…ですよ?」

笠井は少し離れていた三上との距離を詰め、その顔を下から見上げた。珍しい笠井の行動に内心ドキリとする。

「竹巳…」

ちゅっと可愛らしい音を立て、三上の唇に己の唇を重ねる。

「たまにはいいじゃないですか?」
「いいけどよ…お前甘いわ…」

くすくすと顔を見合わせて笑う。目が合えば瞳を閉じ、唇を重ねる。パーカーの裾から三上がするりと手を差し入れた。

「ダメですよ?」

三上の手を掴み、行動を阻止する。

「止めるか…普通……」
「止めます、外ですから。何考えているんですか…?」

先程までの甘い雰囲気が嘘の様に、笠井は三上から離れる。

「あららー三上フられちゃった?」

泣きそうな顔をした根岸を連れた中西が、三上の後ろに立っている。

「根岸先輩…大丈夫ですか?」

「笠井ちゃんありがとね、ねぎっちゃんは大丈夫よ」

にこりと中西は笑みを浮かべて答える。根岸をシートの上に座らせ、飲み物まで渡してやる。

「ネギ何かほっとけばいいじゃねぇか」

「あらぁ〜邪魔してごめんね?でも場所は考えないと駄目なんじゃない?」

自分も根岸の隣に座り、悠々とお茶を飲む。
いらついている三上を慰める様に、笠井が耳打ちをした。

「誠二のとこ行ってきますね///」

笠井は藤代達のいる波打ち際まで走っていく。

「笠井ちゃん真っ赤。何言われたのよ?」
「言えねぇ。珍しい竹巳ちゃんからのお言葉だしな」
ニヤニヤ笑う三上に中西はここにいない笠井に向かい、ご愁傷様と手を合わせた。



後日。機嫌が良すぎて藤代に気持ち悪がられる三上と、あくびの絶えない笠井が食堂で見られた。



Fin


これ書いてるときは雨が降ってた。
ここに書き写しのは下にある日付ですけどね。
ちょっと積極的な竹巳ちゃん。
裏の部分はのちのち書こうか迷ってます。

2004/8/31   .t