家庭教師 U
「あの子って三上の生徒じゃない?」
中西の発言に俺は指差す方向を向く。確かにいるのは竹巳だ。
「あぁ、そうだわ」
「…あの人は知り合いとかかな?ちょっと違うっぽい?」
竹巳の横にいるのはスーツを着たサラリーマン風の男。竹巳に何か言ってやがる。
「ねぇ…三上、あれって……援交ちっく?」
確かに言われてみりゃ。そう見える。
「…あ、どっか行くみたいねぇ。尾行てみる?」
冗談交じりの中西の提案に俺はのることにした。竹巳はあんましゃべらねぇから気になんだよな。
竹巳と男が入った道はラブホテル街。おいおい、中坊の行く所じゃねぇぞ。
「親しいみたいじゃない?全く知らないって訳じゃなさそう…?」
「確かにな…」
竹巳と男は某ホテルに入って行った。
やばいんじゃないのか…?両親にばれたらよ
「待つ?」
「真相は知りたいし?」
安易ながら竹巳達が出てくる迄待つことにした。
1時間ちょいくらいで竹巳と男はホテルから出て来た。男は竹巳に封筒を渡し、その場を去っていく。
男が居なくなり、竹巳が一人になったのを確認。俺と中西は竹巳に話し掛けた。
「よぅ、竹巳」
「はじめまして。俺は中西秀二。三上の友達ね」
話し掛けられた竹巳は、かなり驚いている。
「あ…亮さん…」
何でここにって顔してる。まぁ無理もないか。
「今の誰なんだ?金とか不自由ないだろ?」
「…メル友です…確かにお金とかに…不自由ないですよ…」
じゃぁ何でなんだか?
興味本位ではなさそうだしな…何つーか慣れてたし
「……ピアノが欲しいんですよ…」
あるじゃん、ピアノなら竹巳の家に。
「はぁ?」
近くの喫茶店に竹巳と中西と入り、竹巳に色々聞かせてもらった。
どうも俺にはよくわからんが、家にある母のピアノではなく、自分のピアノが欲しいらしい。白いグランドピアノでバカに高い。
武蔵には音楽推薦らしいが勉強も周りに負けたくないから、わざわざ俺に家庭教師を頼んだらしい。
「……で男相手にしてるってか?」
「亮さんには迷惑掛けてないはずですよ?」
掛かってません、猫かぶりに騙されてましたよ。
演技もイケるんじゃねぇの?竹巳ちゃん
「わからないなぁ…」
中西が呟いた。
「買ってもらっちゃ駄目なの?」
御もっとも。
「自分で買いたいんです……ぁの…亮さん…両親には内緒にしてくださいね?ばれたら危ないと思うんですよ」
…危ないより気絶でもしそうな両親だぜ?
むろん秘密にしとくけどよ…惚れた相手がこーんなことしてんのは、ちょっと気にくわねぇな
「竹巳、止めた方がいいと思うぜ?」
「俺も三上に賛成。竹巳ちゃん可愛いけどこれはマイナスだよ?」
ナイス中西。
竹巳はきょとんと俺等を見ている。こいつ…ちょっといやかなり世間ズレてるっつーか知らずっつーか…
「……そうですか?でも…迷惑掛けてませんし…」
流石の中西も驚いてやがる。そりゃ俺も驚きだ。
「…なぁ竹巳、俺なお前に一目惚れしてんだよ」
「あぁやっぱり?三上が機嫌よかった理由解決したわ」
竹巳はマジできょとんとして俺を見た後、顔を赤くさせた。
あー可愛いわ、やっぱり
「え…あのっ…///」
「いいから聞けって。それでな、惚れてる相手が知らねぇ野郎とセックスしてんのは、俺には耐えらんねぇんだわ」
真面目な俺の表情と声に竹巳は朱い顔のまま、眉を寄せる。
困ってるのは分かる。突然センセイの俺にこんな事言われりゃなぁ…俺もビビるっての
「だから、竹巳には止めて欲しいわけ。わかる?」
「はい……ぁの…」
こくりと深く頷き、俺の目を見て竹巳が口を開いた。
「ん?何?」
「あの…僕も……亮さんに一目惚れしてて…だから…こんなとこ本当は見られたくなかったんです…」
俺を見つめる真剣な大きい目には、零れそうなほど涙が溜まっている。
畜生…可愛いこといいやがる
てか……俺等両思いかよ
「竹巳、見なかったことにして。忘れるからよ、俺と付き合わねぇ?」
中西はさっきからムカつく程ににやけてやがるし、暫く中西には逆らえねぇかもな…
「……僕なんかでいいんですか?」
涙の溜まった目で俺を見上げる。
「てか…竹巳がいいんだけど?」
「あ…じゃぁ…その…よろしくお願いします…///」
真っ赤になって可愛過ぎ。ヤる事ヤッちまってんのにウブなこった。
「よかっねぇ、三上」
くすくす笑いながら中西がからかってきやがる。
「取り敢えず…竹巳は今、関係持ってる野郎とは切れろよ?」
「はい…分かってます」
俺は竹巳の携帯に俺の携帯番号、アドレス、住所を入れた。竹巳のも俺の携帯に入れさせて。
「俺、一人暮しだからよ、泊まり込みでお勉強も大歓迎な」
その言葉に竹巳は赤かった顔を、更に朱くさせた。
まぁ両親の許可が得られればっすけどね
End
はい、ちゅーと半端やなー(笑)
この竹巳ちゃんは天然さんです。さらに世間知らずです。
更にうぶ…やることはやちゃってますけど
2004/9/5 .t