家庭教師  T
「亮…家庭教師のバイトしない?」

突然、母親から提案…モトイ、命令が下った。

「笠井さんの所の竹巳ちゃんなのよ、あんたと同じ学校に行くんですって」

母親の言う笠井さんは親父の仕事関係の人らしい。プロの指揮者とピアニストのご夫婦だ。アーティスト名は笠井では無く、音楽に興味ない俺でも聞いたことのある名前だった。

「可愛い子よ?奥さんにそっくりで」

俺を無視して話を続ける母親に、溜息がもれる。
冷静に頭を回そうぜ、俺。とりあえず、あの母親が可愛いと言うなら間違いは無いはず。武蔵森に進学希望なら頭も悪くは無いはず。ここまで考えて俺は、母親にOKを出した。

「明日の1時からよろしくね?終わりは4時くらいかしら?」
「へーへー」






あぁ…かなり好みな顔。
俺の理想がここに!って感じだな。

1時10分前に着いた俺を出迎えたのは、今日から俺の生徒になる『竹巳ちゃん』だった。
大きな猫目にさらさらの黒髪、俺よりも10センチは低い身長。音楽一家なだけに綺麗な指先。

「三上 亮さん?」

あぁ低くなく高過ぎずなこの声もかなり俺好み。

「おぅ、今日から君の家庭教師になる三上 亮。亮でいいぜ?」

先生も捨て難いが、ここは親睦を深める為に名前か

「…じゃぁ亮さんで…僕のことは竹巳って読んでください」

にこりと笑う竹巳は正に俺の理想通り。……って今「僕」って言いませんでしたか?

「どうぞ?父も母も今はいませんけど」

「なぁ…お前、男?」

「…?そうですよ??」

あぁ…母親に肝心なこと聞いてなかったな…あいつはジャニーズ好きだった…。今回ばかりは恨むぜ…

取り敢えず竹巳の部屋に通された。

「母は4時までって言ってましたけど…早めに切り上げてくださっても構いませんから」
「まぁ、4時までは教えるつもりだけどな。何から見ればいい?」

堅すぎるような竹巳の敬語は気に入らないが、一目惚れしちまったもんはしょうがねぇ。頑張ってオトしますかね

「ぁ…数学いいですか?この問題集の…」

竹巳が開いたのは受験対策様のよくある問題集。過去問とかも載ってて便利だよな…

じゃなくて、数学ね
「あーこれは、この公式あんだろ、これをちょっと変形させてだな…Yにこれを当て嵌めれば、な?」
数学は得意なんでね

「あ…本当だ。解けました!じゃぁここも応用ですね?」

やっぱり頭はいいらしい。ちょっと教えれば、応用も効く。教えガイがあっていい生徒じゃねぇか。




「三上君ありがとうね」

確かに母親の言う通りに、竹巳は母親似らしい。

「 いえ、俺何かで役に立ててよかったですよ」
ここはいい人のがいいだろと俺の勝手な判断で、猫を被らせていただく。

「明日も、竹巳を見てやってくれないか?」
竹巳の父親からの提案に喜んだ。願ってもないぜ。

「俺でよければ是非」
俺は明日から午後6時から午後9時までの時間、竹巳の家庭教師としてアルバイトすることになった。



「三上、最近ご機嫌だねぇ何かいいことでもあったとか?」

昼飯を食っている俺の向かいに、悪友の中西が座り唐突に聞いてきた。
「別に?」
「バイトしてるんでしょ?生徒が可愛いとか?手は出しちゃ駄目よ?」

こいつは預言者か何かか?恐いくらいに見透かしてやがる。

「まだ出さねぇよ」
ニヤリと周りいわくデビスマを浮かべた。



「いらっしゃい三上君。竹巳ならお部屋にいるわ」

「毎日済まないね」

竹巳の両親にすっかり気に入られている俺は、何の躊躇無く竹巳の部屋に向かった。

「あ…亮さん、今日は英語しませんか?」

俺の顔を確認し、竹巳は俺に笑顔で話し掛けた。今日は英語な気分らしい。




何の変哲も無く、バイトが続くはずたった。竹巳を中西と出掛けた先で見つけるまでは。




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アホらしい作品です。
自分でも思ったくらいに。
これも携帯で知り合いに送りつけたやつ。

2004/8/31  .t