昇る日
    
〜始まりの日〜
時は30XX年。
崩れた治安。傲慢な政治家によるずさんな改革。
世の中は、無秩序な世界になっていた。政治家が内輪だけで金を回し、物品を回す。貴族以外の人間に回ってくるのは、ありえないような値段の付けられた商品ばかり。
テロリスト撲滅と称し、政府軍が一般人を虐殺。貧しい生活に耐えられなくなった人々は、政府に刃向かう為に手を組んだ。しかし、大人達は政府軍により次々と殺された。
政府は金持ち以外の人間を「下人」と呼び、刃向かう人々を「悪魔教祖」として殺した。

そんな中、政府に刃向かう青年達、レジスタンス『暁の党』は政府に恐怖を与え続けていた。
罪を被せられ囚われた人々を救い出し、高みから市民を苦しめる貴族、政治家を殺める。
政府軍は彼らを抹殺する為に様々な策をとった。しかし、彼らはそれをことごとく回避し更には、政府軍に痛手まで負わせた。



「晃くん!!もう引いた方がいいよ!!」
「わかってる。圭、聞こえるか?」

黒い皮のバッグを抱えた万作が、必死に晃に言う。晃とて、今の状態がいいものでないことくらい解っている。晃は無線機に声を掛ける。

『聞こえてる』

無線機から落ち着いた声が聞こえる。

「今日は引こう。怪我人が多い」
『わかった。』

晃のしっかりした声に、圭が同じくしっかりした声で答える。

「俺らは怪我人連れて先に帰ってるからな」
『俺もすぐ帰りますよ』

万作と晃は「助かる見込み」がある怪我人だけを連れ、暁の党の本部まで帰った。万作は救えなかった仲間の為に涙を流した。医療環境の充実していない環境なのだ。いくら腕のいい医者の万作でも、全員を救うことは出来ない。それが万作は悔しくて仕方が無い。薬にも限りがある、体制が辛くなれば引くしかない。人数が減ることが何よりも一番の痛手になってしまう。

「ごめんな…万ちゃん…俺の作戦が悪かった。」

涙を流す万作に晃が唇を噛んで、頭を下げた。

「晃くんの所為じゃないよ…こっちの方が劣勢なのは変わりないし…今回はまだましだよ。少し医療器具も薬も手に入ったんだし、結果は悪くなかったはずだよ。圭もそう言うよ。」

涙を拭った万作がにこりと笑顔を作る。
リーダーの晃が暗いと仲間達みんなが暗くなってしまう。万作も晃や圭以外の前では涙を見せない。副リーダーである自分が、医者である自分が弱音を吐いてはいけないのだ。

戻ってきてから2,3時間が経っていた。
圭がまだ帰ってきていない。
仲間からの言葉に晃と万作は一瞬固まってしまう。
圭が率いるチームはほぼ全員が帰ってきていた。しかし、圭だけがまだ帰ってきていない。

「晃くん…圭…」
「圭に限ってそんなわけないだろ?」

帰ってこない=殺された。そう考えるのが今の世の中では妥当なのだ。万作はぎゅっと目をつむり「圭を探しにいく」と部屋を走り出た。晃も慌ててその後を追う。一人での行動は危なすぎるのだ。

「圭!!!」


「何?万ちゃん…そんなに慌てて、何かあったわけ?」

ライフルを肩に掛けた圭がきょとんとして、万作を見た。

「よかった…帰ってくるの遅いよ…って誰?」

圭の腕の中には、お姫様抱っこされた(おそらく)人。政府軍の軍服でもなく、自分たちのような格好でもない踊り子の様な衣装を身に纏っていた。
踊り子なんて職業は、金を持つ政治家や貴族くらいしか相手にしない。レジスタンスの間でもあまり好かれない職業だ。無論、圭も嫌いなはずで。

「ぶつかって、気絶させちまった…」

バツの悪そうに圭が言う。圭はそのまま自分の部屋へ踊り子を連れて行った。
その途中。

「圭…無事だったんだな。その子は…?」

晃は表情を曇らせた。踊り子は政府側の人間になるのだ。そんな奴を簡単にはこの建物の中に入れたくないのが本音だ。

「俺が気絶させちまって…」

言葉を濁す。
晃は溜め息と共に早く寝かせてやるように言った。圭が言いたくないのなら無理は聞かない。これで仲間割れ何てあれば大変なことになる。


「圭が人連れて来るなんて…」万作は小さく呟いた。圭は一人が好きだ。攻撃の際は班制だが、圭はほとんど1人で行動している。どこか周りの人を避けるように、遠ざけるような雰囲気を醸し出しているのだ。そんな圭が人を抱えて帰ってきたのは、嬉しくもありまた、心配でもある。
晃と万作が次の作戦を考えていると、突然、叫び声と銃声がした。


いやぁぁぁぁぁぁあ!!

ガゥン、ガゥン…


聞こえてきたのは音の元は、圭の部屋の方面。万作と晃は、部屋から走り出て圭の部屋に向かった。







中途半端なとこで区切ってみました。圭怜ですから、あしからず。
ちょっとここに「暁の党」について
晃 :リーダー、何か行動を起こすときは晃の計画で動いている。
万作:副リーダー、凄腕の医者。この戦争がはじまる際の徴収を断っている。
圭 :攻撃部隊の隊長。人との関わりをあまり持たない。
   元政府軍暗殺第一部隊隊長のスナイパー。

こんな感じ。人が増えたらまた、後書き(言い訳)の中で紹介します。

2004/9/5   .t