ぶらり湯煙の旅 V
こつこつと小さな物音がして怜は目を覚ました。
「ん〜…何時?…ぅわ、まだ9時じゃん(>∩<)何だょ」
枕の近くにあった圭の携帯で時間を確信する。もう一度寝ようとした怜は、フとここが旅館である事を思い出し、慌てて圭を起こそうと声をかけた。
「けぇ!起きてょぉ(ノД`)朝ご飯〜!」
「ぅるせぇ…」
「けぇのせぇで出れなぃんだょ!!」
「……わぁったよ…」
のそりと布団を抜け、入口まで行く。
戸を開けると、正座した着物姿の矢代がいた。出て来た圭の姿に慌てて頭を下げ、挨拶をする。
「おはようございます。お食事の方、お持ち致しました。」
「中、運んで?」
御膳を部屋の中に運び込み机の上に並べる。
その間、圭は備え付けの洗面台で顔を洗う。呼ばれた気がし、頭を上げた。
「けぇ、けぇ〜(>∩<。)立てなぃ」
布団から出ようとしたらしい怜は、乱れた浴衣のままペタリとその布団の上に座り込んでいる。
何とか役目をしている帯で、ゆるりと止められた浴衣は今にも肩から滑り落ちそうになっている。
圭はいつもの事と気にしないが、声にそちらを見てしまった矢代は慌てて視線を反らした。
「じゃぁ飯いい?」
「ゃだ(っд`)食べるょ!だから連れてって〜」
矢代がいることは怜の頭の中に無いのか、両手を圭に向かって伸ばした。それを何等変わり無くすっと圭はとり、軽々と怜を持ち上げた。
「し…失礼致します…」
深く頭を下げて矢代は戸を丁寧に閉め、部屋を出て行った。
「ぃただきまぁす(>∪<)」
「ぁ…美味い」
「けぇ?ぃただきますはぁ?」
ぷぅと頬を膨らまし、首を傾けて圭を見つめる。
「…いただきます…」
「はぃ。ょろしぃ(・∪<)」
朝食なのだが、朝には結構な量がある。それを次々と怜は胃に納めていく
一体小さな体のどこに入っているのだろうかと、怜と食事をする時は毎回思う。かと言う圭も細身だがよく食べる方である。
「ふぅ…美味しかったね、腰痛ぃのなかったらもっとょかったのに(ε・`;)」
「…よがってたくせに」
「もぅ!!けぇだってそぅじゃんか!」
ぎゃぁぎゃあとくだらない言い合いが暫く続き、飽きたというよりも呆れ始めた圭が会話を止め、着替え始めた。怜も特に何も言う事なく、着替える。
「ねぇー電車から見ぇた神社行こぅ?」
「神社ぁ?…あぁ…あったなそんなのも」
二人はまた、まったりと歩いて怜の言う神社に向かった。
「でね、その神社で万ちゃんと晃君に、ぉ土産買ったの(>∪<)」
「へぇ〜ぁりがとぅ怜」
「はぃ、こっちが万ちゃんに!こっちが晃君」
怜が手渡したのは石の付いたお守り。万作にのは鮮やかな水色の石、晃に渡したのは神秘的な深い緑の石。怜曰、色が綺麗だったからみんなお揃いで買った。らしい。そういう怜は紅い石を圭は黒い石の付いたお守りを持っている。
「楽しかったんだ?いいなぁ…」
万作はにこにこと笑いながら土産話(惚気話ともいう)をする怜と、いつもと変わり無く冷めた顔をしている圭を見る。
「楽しかったならいいじゃないか?まぁ…作詞と作曲がなぁ」
「ぁは(ゝv・;)」
「う゛」
晃の言葉に、圭は顔を反らすように視線を泳がせ、怜は引き攣った笑いを浮かべた。それを見て晃は大袈裟に溜息をついて見せる。
「お前ら…時間ない中で旅行許したんだけど?」
「ぅ…すみません」
「晃君、ラブラブデート旅行だからぁそんな暇なかったんだょ、二人には」
にっこりと笑っているのだが、えらく毒のある笑いで万作が素直に謝った圭を見る。
「ぅん(>∪<)だってぇ〜けぇが全部準備してくれてたし、ちょぉ格好ょかったから(*>▽<*)作詞とか考ぇてなかった」
ぎゅうっと圭の背中に抱き着く。身長の関係上、背中ではないが、本人は背中に抱き着いたつもりなのである。
「怜〜開き直ったな…」
「あはは、怜らしいねぇ。晃君も期待はしてなかったんでしょ?ならもぅいいじゃん」
一見、圭と怜を庇っているようだが、実際は晃が長い間自分以外の人に構っているのが嫌なだけである。
「これからちゃんと怜に作詞させるし…俺も曲作るから」
「頼むぞ?時間ないって時だからな!」
「はぁ〜ぃ、俺様頑張っちゃぅかな☆」
まだ圭に抱き着いたままの怜は、きゃきゃっと笑いながら晃に片目をつむって見せた。
「とりぁぇず、二人とも疲れてるだし。今日はもぅ帰って休みなょ」
万作の意見に圭も怜も賛成し、家に帰ることにした。帰り際、晃にしっかりと作詞作曲するように釘をさされた。
「けぇ〜」
「あ…?」
ベットの中、腕に抱いた怜が自分を見上げる。
「旅行…また行こぅ…ね?二人だけでだょ?」
「おー…今度はもっと遠いとことかな」
優しく圭は怜の頭を撫でて額に小さく口付けた。
「ぅん(>∪<)」
End
終わりました。
そろそろ体育祭に文化祭の季節…
頑張れ副部長兼販売部長(自分のこと。)
2004/9/1 .t