伝エ切レナイ透明ナ気持チ 
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翌日、三上が起きた時にはすでにみんな起きていた。渋沢にいたっては朝ご飯まで作っていた。
まだ寝足りないといいた気な根岸も、朝食の香りで目が覚めたようだ。藤代はすでに食べ始めている。
「あぁ、起きたか?三上。」
「おー…俺の家じゃねぇ気がするぜ…」
普段はコーヒーを飲むだけの三上にはこの光景が、少し異様なのかもしれない。重たい足取りで椅子に座り、渋沢の用意した朝食を食べ始めた。

ガチャ…

「笠井、おはよう」
「おはよータク」
リビングに入ってきた笠井は、ペコリと頭を下げ挨拶を返した。
「おはようさん、笠井」
フッと笑みを浮かべ、三上は笠井に挨拶をした。笠井は、軽く握った拳をこめかみに持っていき、下に動かす。その後、両手の人差し指を向かい合わせて指をお辞儀させるという動作を、馴染んだ様にした。
「手話か…それが「おはよう」なわけ?」
笠井がこくりと頷く。
三上は、何か考えるように少し上を向き、笠井に向き合った。
「俺にさ、それ、教えてくんね?」
「??」
笠井はくるくると糸を撒くように両手を回転させた。三上は何とか口元を読む。
「それが、手話って単語か?取り合えず、手話教えてくんね?俺もお前と話したいし」
きょとんと三上を見るのは笠井だけではないようで、藤代と渋沢は不思議なものを見るように三上を見、中西はにやりと怖い笑みを浮かべ、根岸は首を捻っている。
「筆談よりも早いだろ?スケッチブックねぇ時は話せねぇっしょ?」
いい訳がましく聞こえたのは、気の所為ではないはずだ。しかし、笠井はにっこりと笑みを浮かべ大きく縦に頷いた。正直なところ、そう思ってくれること自体が嬉しいのだ。周りは紙とペンを渡すだけで、手話には興味を表さないのだ。今は聞こえるけれど話せない状況の笠井には、筆談よりも手話の方が気持ちが楽なのだ。


「もう13時じゃない?ねぎっちゃんそろそろ帰らなきゃね。」
「あーレポートやってないよーー」
中西が泣きそうな根岸を引きずるように三上の家を出る。三上の隣を通る瞬間「笠井に惚れたでしょ?」と囁く。三上も中西に「ぜってぇオトすから」と宣言までした。
中西は心底楽しそうに笑顔を作り、三上の家を後にした。

「中西先輩と何話してたんすか?」
「バカ代に言う必要はねぇな」
「あーそっすか!」
やけにあっさり引いたのは、昼食のデザートが目的だからだろう。
甘いデザートを美味しそうに食べる藤代と笠井を苦い表情で見ながら、三上はコーヒーを口にする。それから、思いついたように笠井に話し掛けた。
「笠井、携帯のアドレス教えて

笠井はアドレスを書いたスケッチブックを三上に渡した。携帯に入れた三上は、そのスケッチブックに自分のアドレスを書き、笠井に返した。
「俺の仕事は自宅でするやつだからさ、暇あればいつでもメールしろよ?」
その言葉に笠井は驚いた顔をしていたが、やがて嬉しそうに頷いた。声が出なくなる前の記憶が曖昧な笠井には、話相手が出来ることが嬉しいのだ。
「って…三上先輩ナンパっぽいですよ?」
「俺もそう思うな」
藤代が白い目で三上を見る。渋沢はポンと三上の肩を叩く。
「るせーよ」
きょとんとしていた笠井は、またふわりと笑顔を浮かべた。
  これがこの人たちの「普通」なんだ…
「誠二もうそろそろ帰らないと、笠井もな?」
「えーもうそんな時間っすか?」
時刻は16時を差している。
笠井、藤代、渋沢の3人は持って来ていた荷物を持ち、三上の家をでた。
「ちゃんとと食べないと体に悪いぞ、三上」
渋沢は三上に釘を刺してから出て行った。相変わらず藤代は大声で話しながら歩いていた。


そんな出会いから2週間近くが経つ頃には、三上と笠井は2人で出掛けるほどまで仲良くなっていた。
ひとえに三上の努力の賜物だろう。手話も簡単なものでなら会話できる様になっている。三上を知る人物ならみんな驚くであろう程、三上は紳士的に笠井に接している。
この日も笠井と2人で、買い物に来ていた。
笠井は、人差し指で自分の胸を指し、ピアノを引く様に手を動かし、右手で左の鎖骨の下をトンと叩いた後、その手で同じように右の鎖骨の下を軽くを叩いた。
「(ピアノ?出来る…)あ、ピアノ弾けんだ?」
こくりと笠井が頷く。

「今度さ、俺に聴かせてくんね?」
三上の言葉に笠井は、大きく縦に頷いた。嬉しそうな笑顔を浮かべて。





だんだん何がしたいのか分からなくなってきた…(-ω-;)
次は竹巳ちゃんがピアノ弾きます。それと、竹巳の家に三上がいきます。
オリキャラ出てきます。きっと。
そのうち??(曖昧すぎ)

2004/9/19  .t